コンパクト
昔の女の人はハンドバッグの中に
コンパクトを必ずいれていた。
考えてみると私が思う「昔の女の人」とは
母のことであって ほかのひとはどうだったのかわからない。
母はコティのコンパクトを使っていた。
くすんだ金色に唐草模様がびっしり浮き出している
小型の長方形だった。
コティにはなにか特別な思いがあったらしい。
私は化粧品売り場は素通りしているのでよくわからないけど
コティというのは今もあるのかしら。
鏡台の抽き出しにはほかにも美しい銀細工のコンパクトなどがあり
母にとって大事な持ち物のひとつであったと思う。
このかたも正装して最後の仕上げにちょっとコンパクトを取り出したらしい。
なぜ 正装しているのか このあとなにがはじまるのか
いろいろ想像しています。