小説「午後の曳航」
三島由紀夫の「午後の曳航」を初めて読んだのはいつだったろうか。
その魅力にすっかり虜になった私は舞台になった横浜に行ってみたかった。
ホテルニューグランドに泊まってみたかった。
海を眺めて外国船を見て元町を歩いてみたかった。
その夢が全部かなって元町を歩いていた時のこと
ふと一軒の紳士用品店を外からのぞいてみて
「小説のお店だ!」
その雰囲気が房子の経営するお店に似ている!
あとで調べたらたしかに小説のモデルになったお店だった。
そこに美しい女主人はいない。
それはそうだ。
もし房子がいたらもう80半ばの老婦人だもの。
房子のモデルはいたのだろうか。
私にとって主人公は息子ではなく房子なのだ。
夏休みの終わる頃なのに赤い下着に黒の絹のレースの着物を着た房子。
今の夏はそんな装いはとても出来ない気温になってしまった。
美しい主人公と息子はあのあとどうなったのだろうか。
「チャタレイ夫人の恋人」を読んだあともこのひとたちは
これからどうなるんだろうと思ったものだった。
この写真の人の装いは房子の時代と違うけど
物憂いかんじはちょっと房子さん風かなと載せてみました。