近藤富枝氏の訃報

私の敬愛する作家の近藤富枝氏が亡くなった。
何故かしばらく手に取らなかったこのかたの本を読みたくなって
「移り行く姿」と「文士のきもの」を本棚から取って枕元の机に置いた。
それが24日。
一度お会いしたときのことを思い出しながらその夜から読み始めたのだが
昨日の新聞で24日になくなったことを知った。
あまりの偶然に驚いている。



私がファンになったのは「服装から見た源氏物語」の女三の宮の記述を読んでからです。
  『作者の式部は、優れていない女性については、全く同情がない。密通して不義の子供を産むと言う行為だけをとり上げれば、女三の宮と藤壷は全く変わりはない。ところが式部は、密通よりはその後不用意にも夫にそのことを感づかれる用意のなさ、人間的な力の不足こそ女は非難されるべきだと考えている。藤壷がいつも賛美され、女三の宮が冷たくつき離されるあしらいを作者から受けているのはそのためである。
 あの春の夕べ、うっかり袿姿を人目にさらしてしまった女三の宮の方にこの不義事件の半ばがあるとさえきめつける紫式部という作家は、よくよく馬鹿な女が嫌いなのであろう。』


なぜかこの部分だけがはっきりこころに残ってしまった。




素晴らしい作家でとてもおしゃれだった近藤富枝さま。
さようなら